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コンテンツは最後に書く—学習者が「本当にできるようになる」ための設計思想
スキル開発 アカデミー プロセス
2026年7月14日

ジャスティン・サンダース 博士
Head of Content and Learning Design, MS1
教育・研修の幅広い分野において20年以上の経験を持つ。これまでミネルバプロジェクト(Minerva Project)、テンプル大学ジャパンキャンパス、大阪大学、国際バカロレア(International Baccalaureate)など、数々の著名な教育機関に携わってきた。
大切なのは「コンテンツ」ではない
MS1アカデミーのスキル開発コースをつくるとき、私たちが「どんなコンテンツを扱うか」を考えるのは——実は、いちばん最後のステップです。 意外に聞こえるかもしれません。一般的にトレーニング教材をつくるときは、まず扱いたいトピックを決め、スライドを作成し、そのあとに理解度を確認するための小テストや演習を用意する。そんな順番で進めることが多いはずです。 たしかにこの方法は、「何を教えたいか」を整理するには優れています。けれど「学習者が実際に学べるかどうか」という観点では、必ずしも効果的とは言えません。この進め方が目指しているのは、あくまで内容を“カバーする”こと。一方で私たちが本当に大切にしているのは、学習者が「これまでできなかったことを、できるようになるかどうか」なのです。 MS1アカデミーは、その核となる部分においてスキル開発のプラットフォーム。つまり、どんなコンテンツを扱うかではなく、学習者が実際に何をできるようになるかに焦点を当てています。
コース設計のプロセス
私たちのプロセスは、次のような流れで進みます。
- 1.まず、検証・精査済みのタクソノミーの中から実際のスキルを一つ選び、そのスキルが現場でどのように活用されているかを検討する。
- 2.次に、そのスキルに関連する、明確で測定可能な学習成果を定義する。つまり、学習者がこれまでできなかったどんなことができるようになるかを、はっきりさせる。
- 3.コースの学習成果が定まったら、学習者がその成果を実際に達成できていること、そして構造化された環境の中でスキルを応用できることを示せるプロジェクトを設計する。
- 4.そこから逆算して、プロジェクトを完了するために必要なサブスキルを段階的に練習できる、スキャフォールディング(足場かけ)されたチャレンジを設計する。
- 5.そして、そのチャレンジを完了するために学習者が必要とするコンテンツについて、最後のここで、ようやく考える。
すべてのレッスンには、役割があります。学習者が自律性と習熟度を高めながら、スキルを応用できるようにすること。コンテンツは目的地ではなく、あくまでそれを支えるための手段にすぎません。 このような逆算型の設計プロセスは、決して一般的ではありません。しかし、半世紀以上にわたる教育設計・学習科学の研究に裏付けられたものです。 私たちのパートナー企業は、多くの場合「扱ってほしいトレーニングトピックのリスト」を手に相談にいらっしゃいます。それは、対話を始めるうえで良い出発点です。私たちの仕事は、そのリストを一つの問いに変えること。すなわち、「人々が実際にできるようになる必要があることは何か」を問うことです。 「あるテクノロジーについて扱ってほしい」というリクエストは、やがてチームが苦労しているタスクや、的確に行うべき意思決定、あるいはやり方を変えたい業務についての議論へと変わっていきます。ここで、スキルと学習成果について合意ができれば、トピックは自然と整理されていくのです。
なぜ、この方法がより良い学習を生むのか
このような設計方法によって、二つのことが変わります。
第一に、学習者はすべてのコースを、自分のスキルの習熟度を証明できる具体的な成果物とともに終えることができる、という点。プロジェクトが実際の業務を反映したものであるため、コースはトランスファー(転移)を目指すものになります。つまり、スキルがコースの中だけで終わるのではなく、実際に必要とされる仕事の現場へと持ち出されていきます。 研究によれば、二つの状況が実際の要素を共有しているほど、学びは新しい状況にうまく引き継がれます。実践が仕事の内容に近ければ近いほど、スキルはよりうまく現場へと移っていくのです。
第二に、すべてのレッスンは、その存在意義を証明しなければならない、という点です。学習に費やされるすべての時間が企業からの投資である私たちの状況において、これは非常に重要な考え方です。 学習科学では、これを「構成的整合性(constructive alignment)」と呼びます。学習成果・活動・評価が、すべて同じ目標を指すように設計されるべきだ、という原則です。ある概念が学習者のプロジェクト完了を助けないのであれば、その概念は選考から外れる。結果として、より無駄のない、関連性の高いコースが生まれます。座って聞くだけの時間は減り、実際のスキル開発に直結する実践と応用の時間が増えていくのです。 これは、コース設計上の単なるテクニックではありません。MS1アカデミーのコースが何のために存在するのか——その姿勢そのものです。 コースとは、これまで持っていなかった能力へと至る道。そしてコンテンツは、その能力を支えるために存在します。身につけたいスキルから始めれば、あとは自然とついてくる。逆に、コンテンツから始めれば、うまくいくことをただ願うしかありません。 だからこそ、私たちはコンテンツを最後に書く。コンテンツは、そもそも目的ではないからです。
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